ブラックペッパーの「もっと」危険な取引

「フフ、よく来てくれたわね、ZAN」
「……」
「今回、あなたに手伝ってもらう実験は―――ってな、なによ?」
拙者は非常に複雑な顔を突きつけて、スゥに尋ねた。
「……おジャ魔女でござるか?」
「な、なに? なんのことよ?」
「いやいや、たしかにPSOBBも2周年を越え、すでに3年目。ここらで古参ユーザーの別ゲームへの流出を阻止するためにも一念発起しようというのも、わからんではないでござる」
「なによ? なんの話よ一体?」
「そうだよなぁPSUも発売延期でござるが、あれはどう考えてもPS3の発売時期とか絡んでそうでござるしな」
「ちょっと、アンタいい加減にーーー」
「で?」
ずいっと拙者はスゥに近づくと、フォトンうクリスタルを見せた。
「フォトンクリスタルを使ってどんなことをしてくれるというのでござる? 拙者はハカセから言われてこれを持ってきただけなのでござるが?」
「…シェイド博士のことね?」
なにげにうんざりとした顔でスゥがうなづく。理由は、まあ、聞かないでおこう、うん。なんか容易に想像できるし。
「まあ、あんなのでも一応、研究員としての能力は高いのよね」
「黒胡椒団のなかでも浮いてるのか、彼奴は」
拙者とスゥはがっくりと肩を落としてため息をつく。
「それで? 何をしろと?」
「…あなたにはこの中に入ってもらって中のモンスターとーーー」
「あ、タンマ」
「な、なによ」
「いや、せっかくだからそっちから聞く」
そう言って拙者はこの場にいるもう一人、ドアの前を固める小太りレイマーに向き直った。
「え、ええっと…それじゃあ…あっしから説明します?」
最後の質問はスゥに向けられたものだ。彼女は「なんであたしじゃダメなのよ」などとぶつぶつ言いながらも首を縦に振る。
「ZANの旦那にはこの中のエネミーと戦って頂きます。戦って頂くエネミーは多数の突然変異体が含まれています。一定時間内に全敵を撃破して頂くと奥のロックが外れます。そちらに報酬の品を用意してありますのでお受け取り下さい」
「ふむ、つまり一定時間以内に全部の敵を撃破すればいいわけでござるな」
「ええ、そういうことです。敵はフォトンクリスタルのエネルギーを受けて一部が突然変異体になってる可能性があります。報酬もそれ相応のものを用意させて頂いておりますので、なにとぞ」
「だが断る」
拙者の一言にスゥが切れた。
「ーーーなんでよ!!」
「いや、暴力反対」
「~~~! あんたねぇ! それじゃ実験にならないでしょうが! だいたいどこのハンターが暴力反対でLvがそんなに上がるって言うのよ!」
「怒鳴りすぎると脳溢血で倒れるでござるよ? 血圧高いでござろう?」
「誰が高血圧だ誰が!!」
「おろ? 違うのでござるか? たしかそんなことをメディカルセンターで聞いたでござるが?「黒胡椒団のスゥさん、最近血圧が高いのよねぇ」って」
「え、うそ?」
「無論嘘でござる」
そう言った途端、拙者の左頬をフォトンクローがかすめる。それを紙一重で回避すると二撃、三撃と死の爪が迫る。
「………大概にしとかないと、ただじゃ置かないわよ?」
「はっはっはっ。そういうセリフは手を出す前に言って欲しいでござるな」
「くっ、まったくポコポコとレベルばかり上げて………」
さも口惜しそうにスゥが呻く。
「姐さん、どうしやす、この実験をしないことには…」
「わ、分かってるわよ! …ねぇ、ZAN、考え直さない? 報酬はそれ相応のものを用意してあるわよ?」
「いや、拙者レベルばかりポコポコあがったへっぽこHucastでござるからな、そんな危険なことはできないのでござるよ。はっはっはっ」
「……わ、分かったわよ。謝るわよ。私たちにはあなたの協力が必要なの」
「ふむ、本星の連中が何をたくらんでるのか、それ次第でござるな」
「……なんでもフォトンを用いてこのエネミーたちをカードに封印する技術を開発しているってのは、聞いたことがあるわ」
「なるほど、フォトンクリスタルを用いて突然変異体を誘発するのはその展開時のエネルギー変換のデータ調査の為でござるか」
「………」
拙者の言葉が的を得ていたのか、スゥが黙り込む。
「ふむふむ。そういうことでござるか…」
「で、どうなのZAN?」
「報酬は? なんなのでござる?」
「…基本的にはランダムよ。でもその分それなりのものから出現するように設定してあるわ」
それなり、ねぇ。
「まあ、黒胡椒団のことでござるから、それ相応のものが出るのでござろうな…よし、引き受けよう」
拙者はそう言うとクリスタルをスゥに手渡す。
「たく、だいたい何よ、その黒胡椒団って」
「…はて、これは異なことを」
拙者は首をかしげて言う。
「お主らの団体名でござろうが? ブラックペッパー」
「ブラックペーパーッ! ペーパーッ! ペーパーよっ!」
すっげージタンダ踏みながらスゥが反論する。あ、涙。
「いや、知ってるけど」
「~~~!!!」
あー、そろそろかなぁ。とか思ってたら小太りのレイマーがため息交じりに拙者に声を掛けてきた。
「ZANの旦那、…あまりウチの姐さんいじめないで下さいよ…」
と、その時である。拙者のマグがきゅぴーんと目を光らせた。
「お、貯ったようでござるな」
「旦那? 一体何を?」
「うむ、拙者だけで突貫となると支援も受けられぬでな。先にPBを貯めさせてもらった。いや、スロット全部にPB発生装置を装着したのだが思ったより時間がかかったでござるなーーーそれっ」
拙者はPBマイラ&ユウラを発動。これにより一定時間拙者の攻撃力防御力が飛躍的に上昇する。
「あ、あんた…もしかして最初ッから……」
「当然でござろう? ここに降りてきたときよりPBが貯るのを待っていたのでござる」
「じゃあ、断る気なんて…」
「フッ、天下のブラックペッパーの用意してくれた報酬を無下にする気はないでござるよ」
「ペーパーだっていってんでしょーがっ!!」
「フハハハ! じゃあ行ってくるでござる!」
こうしてPBが貯まるまでの時間を潰した拙者は意気揚々と殲滅に向かった。
報酬はSリング・青蓮・ネコミミであった。
ネコミミは帰り際、スゥにつけてやると顔を真っ赤にして喜んだ。少なくとも相方のレイマーには馬鹿ウケでござった。

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