戦い暮れて夜が明けて

気がつくとすでに昼近くでござった。
うむぅ。確か昨日は新クエスト記憶の欠片をクリアして…そのまま爆沈したのでござったな。
セルフチェックプログラムを走らせつつ、拙者は頭を掻く。
ううむ。記憶が曖昧。とにかくメール、ニュース、目覚ましカウントダウンを確認。今日の拙者の運勢は…。
と、そんなことをやってるとふすまがスパンと開かれる。
「ZANさん! あ、起きた?」
ゲルベゾルテが慌てた顔して立っていた。何でござる、朝っぱらから。
「何でって…寝ぼけてる? メール見てない? 今日くるんだよ?」
寝ぼけておらん。メール? 来るって何が?
ああ、洗濯機でござるな? 全自動で6kg洗って6kg乾かせる優れもの…。うむ、高いがいい買い物をした。
「いや、そっちじゃなくて、シャーウィンさん達」
………
「……」
あああ! 忘れてた! なんか来るとか言ってたでござるな! まずい、非常にまずいぞ! 部屋を片づけなければ!!
慌てて見渡すとそこには使わなくなった武器のたぐい、鎧のたぐいが散乱している。
「……やっぱさ、そろそろ在庫処分しなきゃダメじゃない?」
そう、そこにはハンターズのクロークに入りきらなくなった道具類が所狭しと積まれているのである。(注:違法行為です。ハンターズの装備類は規定された区画以外に持ち出しては行けません「総督府広報」)
と、とにかく片づけよう! せめて居間、台所は確保しないと!!
拙者はゲルベゾルテと手分けして慌てて掃除を始める。3時間かけてようやく終わらせた頃、ドアのチャイムがなった。
あ、ELD殿か、今開けるでござ…ぐへ?!
拙者の咽をいきなりゲルベゾルテが突かむ。
「ZANさん! 装甲つけわすれてる!!」
んあ?! いかんいかん。ヘルムもつけて…。ふう、これでよし。
「こんにちは、でござる」
ドアを開けると皆がぞろぞろと入ってきた。
「こんにちは…」
とELD殿
「あら、結構片づけてあるじゃない」
とはシャーウィン殿
[こんにさは]
と花。……花?!
また連れてきたのでござるか!
「いや、挨拶にいくって言うから…大丈夫だよ! だいぶいろいろ覚えてくれたし
! ほらほら!」
ELD殿が促すと花は何枚かのプラカードを持ち出して並べて見せる。
[コンヌチワ][ワタシ][タベナイ]
…敵意が無いことを表してるのでござるな、うん。まあ拙者も事を構える気はござらん。えっと、足(?)は拭いてから上がってもらえると助かるな。一応和式なので。
皆に居間に入ってもらい、拙者が茶を配るとELD殿がお土産をくれた。
「ZANさん、この度はほんっっとおぉぉにお世話になりました」
深々と頭を下げるELD殿。
「いやいや。拙者大したことをしたわけではござらん。これは皆で頂くとしようか」
拙者は受け取った土産ーーーパイオニアまんじゅうを皆に配る。
「メギちゃんからもご挨拶を…」
先ほどのELD殿にならって手を着いて深々と頭を下げるメギド花。器用に別の葉でプラカードを上げている。
[オセワニナルマスタ]
まさかわが家の中でメギド花がお辞儀をする日が来ようとは(ちょっと懊悩)。
「一生懸命覚えたんだよ~。かわいいでしょ~」
あ、いかん、ELD殿の顔が子煩悩の親ばかになっている。このままいくと「思い出アルバム」まで持ち出してきそうだ。
「でもほんと、助かったわ」
シャーウィン殿がほろりという。今回の件はさすがにこたえたらしい。そらそうでござろう。拙者も我が事であればどうであったか……。
む、拙者の家人…?
ふと、わきで饅頭をほお張るゲルベゾルテを見やる。
そう言えばもう一人はどうした?
「じいちゃんなら出かけたよ? 退役軍人対抗のゲートボール大会とか」
…あやつ現役ハンターじゃなかったか?
「いや、なんでもピンチヒッターだとか」
まあいいか。
「で、あのとっつかまえた連中はどうしたでござる?」
「ああ、軍が引き取ったわ。いろいろ聞きたいこともあるし」
…その、程々にな。
拙者は吹き出る嫌な汗を隠しつつそう言った。剣呑な光を放つ目をしたシャーウィン殿はフフフと笑って答えた。
あー、全然手加減する気ないでござるな、やっぱ。
え、これから他のところにも挨拶に行くと? それでは拙者も着いていくか…。

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