遅れてきた新人

その日、私は指定されたブロックにたどり着いた。
そこは公営住宅街の外縁にあたり、人通りもまばらな地域である。小さな風が吹きすさぶ。
前の任務を終え、本星の軍本部に戻り着いたのが二週間前、新たな辞令を受け取り高速船で
ワープゲートを越え、パイオニア2の船団と合流したのが1週間前。
そのあと、検疫、入船審査などで1日間をついやした。
普段なら軍部のゲートで移動できる為、このような手間はかからないのだが、今回は任務の性質上、
そちらは使えない。
受け取った指令書ではゲートに迎えが来ると書かれていたが一日待っても現れなかった。
すでに敵側の妨害工作が始まっていることも考えられる。…もっとも、あの上司のことだから単に
連絡不行き届きだった、なんてこともあり得なくはないが。
そう考えると思い返すだけで苛立たしい記憶がいくつもいくつもいくつも…あああ!
……セルフコントロール、セルフコントロール。
私の名前はセルパ。本星の軍部に所属。その一方でハンターズにレイマールとしての登録もなされて
いる。識別IDはORAN。性別は女性。好きなモノは紅茶。嫌いなモノは上司。結婚歴なし。恋人もなし。
…ううう。
いけないいけない。落ち着かなくては。
とにかく私は合流が果たせぬまま本星の上司と連絡をコレクトコールで(ここ重要)とり、なんとか
先方の住所を入手した。
がだその方法が頂けない。なんで住所を今週発売のクロスワードパズル大辞典なんぞに暗号で
埋め込まなければならないのか?
あまつさえ、答えが載ってないのではどうやって確認しろと言うのか。あの上司が考えることは
全くもって分からない。そんなにコレクトコールが気に入らなかったのか? 恒星間通信の費用を
個人に支払えとでも言うのか? もし私があれの上に立つ日が来たら、喜んであいつの首を切る。
っていうか切らせろ。
私は翌日発売されたクロスワードパズルの本を手に喫茶店に入った。なかは落ち着いた作りで
非常にいい店だった。任務が終わったら帰りがけに寄ってもいいかもしれない。
クロスワードで悩んでいたときそっと入れてくれた紅茶はおいしかった。
おまけにそっと答えを教えてくれたりして素敵なマスターでした。
ただ時々ハンターズと思わしき連中が常連客として出入りしていたのが気になる。とくにあの
「ワッフー」とかいいつつ入ってきたレイマーは人を見るなりビクゥ!と震えて逃げ出した。
大変失礼だ。ええ、ええ、どうせ隻眼で大女でかわいげありませんよ。わるかったですね。
三日かかって解けたクロスワードを元に暗号変換表から住所を分析し、住人情報等を照会し、
ここが指定された合流相手の住んでいるアパートメントだということは確認できた。ホテル代も
飲食代も、ここまでの交通費と合わせて絶対あとで請求しようと固く誓った。あとは、チャイムを
押すだけだ。
ぴんぽーーん
「……」
反応がない。もう一度。
ぴんぽーーん
「………」
やはり無言。もしやすでに何者かによって襲われたのかもしれない。
私はかばんを下ろし、二重になった底から愛用のカスタムレイ00を抜こうとーーー。
「あれ、殿の所にお客さん?」
私は間一髪で銃を抜くことなく、振り返った。そこには小柄なフォーマーが立っていた。
「こんにちは」
「こんにちは。私はセルパといいます。ーーーあなたは此処の住人ですか?」
「ボク? ちがうよ。まあ、同僚かな」
なるほど、おなじハンターズの一員ということですね。
「殿になにか用事?」
「ーーー殿、というのはどなたのことでしょう?」
「ん、ZAN殿」
答えてる相手のデータをさっと盗み取り、データを照会する。あった。対象ランクB、今日接触する
予定だった人物と同じチームに所属するメンバー。通称:ザビ。
「ええ、そうですね。あなたにもご挨拶を。この度、こちらでお世話になることになったセルパと
いいます。どうぞ宜しく」
「え、じゃあーーー」
フ、当惑するのも当然ですね。
「知らないんだ?」
はい?
「ZANさん、PSUのクローズドβ当選したから二、三日前に出かけてったよ?」
Σ MJSK?

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