さらば、ラグオル

私は任務期間中、用意されたプランにそって行動した。
まずLvを上げ、ノーマル、ハード、ベリーハード、アルチメットと駆け上がっていかねばならない。
その為に、こつこつとシミュレーターを繰り返した。
まずはソロでドラゴンまでクリアする。ドラゴンまで問題がなくなったら、次にデロル・レまで、
これを延々と潜り続け、DFの一撃に耐えられるようになったら今度は乱入参加で四人で周回。
死なないことを心がけ、愚かな挑戦はせず、計算づくで、こつこつとただひたすら目的の為に
Lvを上げた。
任務期間が半分経過する頃に、私はようやくULTの森を一人で歩ける程度に成長していた。
その後はただひたすらに森を回り続けた。アリシア・バズという科学者をD因子研究所の伝手で
協力者として引き込み、辟易する彼女を引きずり回し、森を巡り続けた。倒したゴリの数は
もう覚えていない。最終日まで一貫して森を巡った。
無論狙うのはレアモンスターの青いゴリ。
だがでない。これでもか、これでもかと出ない。全くもって不可解だ。
青いゴリ事態が絶滅したのではないだろうかと思うくらい出ない。
結局、私の挑戦は無為に終わった。残念だが仕方あるまい。むしろもう疲れた…。

私は今、エアポートの待合室にいる。今日、もうすぐ帰還命令となる定時指令が届くからだ。
定時連絡を受けたらすぐに旅立てるよう、荷物はすべて持ってきている。残ったものはスペース
ヤマト宅急便で本星の私のオフィスに送ってある。無論着払いで上司を指名しておいた。完璧だ。
「帰還、か…」
思わずその言葉が口をつく。任務の成否はともかく、この惑星を去ることは、けして喜びだけで
迎えられることではなかった。
あの店のコーヒーはとてもおいしかった。本星に戻ってもあの味に…なによりあの雰囲気に勝る店は
そうはないだろう。…犬はちょっとうるさかったけど。
D因子研究所は私とは別の人間によって調査が進められているらしい。見た感じでもかなり怪しかった
からきっと叩けば埃が落ちることだろう。一部のハンター達にチームの名前を見られるだけで道を
空けられたのが印象的だった。
総督はなかなか進まない惑星植民にかなりストレスを感じているようだった。娘さんのことといい、
苦労が堪えないということか。そういえばラボのシミュレータ内に置かれていた石像。あれの生え際が
実物とちょっと位置がずれていたように思う。
住み慣れた部屋はきれいに掃除しておいた。なぜか掃除していたら押し入れの奥からアフロのカツラが
出てきたが…DANのものだろうか?
そして、皆にはお別れを言わずに出てきてしまった。それが一番の心のこり。
物思いにふけりつつ、時計に目をやる。ーーー時間だ。
私は軍支給品のコミュニケーターをとり出し、時限パスワードを入力する。ええと、この時間は
[ジョウシ、ノロウ]だったわね。
システム画面が立ち上がるとすぐにメールソフトが立ち上がり、パスワードを求めてくる。
[ナグッテモアキタラヌ]
メールソフトが立ち上がるとアクセスパスが求められる。
[ナイテモユルサナイ]
そして、暗号化されたメールをうけとり、それをデコーダーに放り込み、パスワードを入力する
[4444]
デコードされたデータが平文で画面に表示されていく。
[伝達 発:惑星連合統括軍司令本部]
いつもの巻頭文から始まる一連の挨拶にざっと目を通し、本文を読んでいく。
[ーーー貴官の報告書とこちらの調査結果とを検討した上、惑星ラグオル上での異常フォトンに
関する調査の重要性が再認識された。また一部特殊遺物を転用した強力なアイテム群に関しても
同様であるーーー]
どうやら私の調査もけして無駄ではなかったらしい。あれらを手にしたハンターズがどのような
存在になるか…。
[全惑星の円滑な統制を目指す軍部においてこれらは消して看過できないとの結論に至り、さらに
詳しい情報を得る為、レオ=グラハートの招聘、および調査の続行を可決した]
ああ、あのオッサン招聘されたの。…って待て、待って、ちょっと待って。今なんて書いてあった?
[および調査の続行を可決した]
それに続くのは私の長い長い肩書き付の呼称。そして次の一文はたった一行の短い命令文だった。
[任務期間延長ヲ命ズ]
「ーーーな・ん・で・す・っ・て!!!」
おもわず叫んでしまった。ラウンジを行き交う人々がぎょっとして立ち止まり、私の方を見てる。
「ママー、あのおねぇさんーーー」「シッ、指さしちゃいけません!」とか聞こえるけど、
聞こえない状態。
たっぷり三十秒フリーズした後、私はがっくりと肩を落とした。
別れを告げなかったことが幸いしたのは言うまでもない。
追記
二週間後、スペースレッドキャップが着払いであの荷物を搬送してきた。あの上司、やっぱコロス。

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