第二幕 <喫茶店ハイアームズ>

喫茶店ハイランド、そこは静かな憩いのひと時を訪れる人々に平等に与える閑静な店である。
一見、どこにでもありそうな喫茶店だがその実どこにもない、そんな雰囲気の店である。
別段メイドがいるわけでも癒し系のウェイトレスがいるわけでもない。
いるのは寡黙で、それでいて人を落ち着かせるマスターと美味い飲み物、それだけである。
拙者はどっかと腰を下ろすと愛用の剣、を傍らに置き、ふかぁぁいため息をついた。
「なんだ、ずいぶんとテンションが低いな?」
そういったのはウィケッドことハカセである。彼は拙者の前の席にすわると、マスターにいつものを頼むと、肩をすくめた。
「最近ラボに引きこもりっきりのお主には言われたくないでござるよ…」
「う、うむ。いや、アレだ。いまがんばっておかねばあとが辛くてな」
苦しそうにそう言い訳するハカセを拙者は鼻で笑う…元気はなかった。
「…ふむ」
「なんだ? ホントどうしたんだお前? 悪いものでも食べたのか?」
「お主じゃあるまいし…いや、実は」
「実は?」
「…所持金が底をついた」
「…はぁ? だってお前、普段から『拙者はお主ほど燃費が悪くないのでござる』とかいってたではないか?」
そうなのだ、フルイドなどを大量消費するFoとちがい、戦闘特化の拙者はホトンド費用がかからない。
もっていく荷物も武器が数種、薬の類もスタアト・ムーン・メイト各種と持っていくが支援があればそれらも消費することはない。
そのうえ、標準装備が少ないゆえ出土品の持ち帰る量もFoよりも多く、効率がいい。
「塔でも行ったのか?」
「いや、そうではござらん…そうか、おぬしは最近篭りっきりだから知らなかったのでござるな」
「?」
「コレンという放浪商人がな―――」
拙者はかいつまんでコレンのことを話した。

「なるほどそれで全財産つっこんだのか」
「うむ、お陰で家に帰れん」
「……」
「……」
「おま、え、ま、さ、か…」
「……さ、さあ何のことでござろう? 拙者子豚の貯金箱なんか知らないでござるよ」
「……」
「……」
「で、どうするんだ?」
「…フムン」
「『フムン』じゃないだろう、『フムン』じゃ! 大体なんだその『フムン』って」
「いや、これは神林長平先生の作品でよく見る口癖で―――ってそれはまあ、どうでもいい」
拙者はコホンと一つ咳払いしてずいっと身を乗り出した。
「問題はあの放浪商人でござる」
「そうだ」
「問題は」
「あのインチキ商人だーっ!」
合いの手は思わぬことに後ろから三つの声で入った。
振り返ると手に手にジョッキを持った三人のハンターがいた。
「おいらもういくらつぎ込んだかわかんねぇヨ」
ラフ…お小遣いすくないのか?
「ぜんぜんレアデヤシネェ」
ザナフ殿、酒量がすぎるとまた姉上が心配するでござるよ?
「だー、もうお財布が軽くなってたまんないよー!!!」
…ユーグ殿、おぬし確か未成年だったがジョッキの中身お酒じゃないよな?
「…ようするにお前達もつぎ込んだ結果、懐が寒くなったと、そういうことか?」
ハカセが呆れ顔で拙者たちに視線をくれる。うう、今日は一段と冷たいなおぬし。
「しかし珍しいく見合わせでござるな」
「んー、ラフがタダで飲み食いできるのはここだけだと」
「オウヨ!」
ザナフ殿の言葉にラフがサムズアップをビシィと決める。
マスターがそれを聞いたらどう思うか…。
見やるとそれまでグラスを拭いていたマスターの手がぴたっと止まる。と、懐から取り出したのは…、家計簿?
…ラフ、来月のお小遣いから差っぴかれてるでござるよ…。
「大体あいつアヤシすぎだっつーの!」
ラフがジョッキを机に叩きつける。ああ、営繕費も引かれたな、今。
「なんなのさ? いきなり現れてどこでもかしこでもレアアイテム景品でスロットなんてさ。おかしくね?」
「んー。でもちゃんと出てるところではいいモノでてるらしいし?」
ザナフ殿がそういって反論する。と、潰れてるユーグ殿が机にのの字を書いている。
「そうそう、その言葉にだまされたんですよ…えぐえぐえぐ」
「まあ、しかしそやつが何者であるか、確かに興味深いな」
「んー。ハカセの関係者?」
「…武器開発は私のセクションと離れているからな…しかしどんな奴なんだ?」
「でぶっちょ」
「じじい」
「ヤセオヤジ」
三人が同時に答え。そして互いに顔を見合わせる。
「…拙者のあったコレン何某は老人でござったが…はて?」

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