キラードラゴン・鎮魂鎌

そんなおかんの一言で拙者達は部屋を移り、EP4のクレーター外周へとやってきた。
「まずは。小手調べでござるな…」
そう言って拙者はブータを誘い、橋の向こう側におびき寄せる。此処からだと双方直接攻撃は届かない。
遠距離攻撃でもあるメギドを試すには持って来いである。
拙者は早速ソウル・バニッシュを手に取った。その刀身は怪しく濡れている。黒いフォトン、D型フォトン因子がまるで残滓のように纏わりついている。心弱き者が覗き込めばたちまちその刀身の中に引き込まれてしまうであろう。

目を瞑る。
脳裏に浮かぶのは辛い日々アレ(リリーに笑われつつ、赤い淵に沈む拙者)やコレ(わざとらしく耳元を掠めていくハカセやアスバルのメギド)である。
息を整える。
それらの想いを鎮め、全身の電節を一旦弛緩させ、しかる後に力を溜めていく。
イメージを想起する。長い短冊にして水を含ませた和紙、それを二枚、細く細く、撚り合わせていく。
紙縒(こより)を作るイメージ。長い紙縒を作るには、何よりも均一に力を加えていく事が肝要だ。熟練の職人は短冊を両手で持って「空中で」作れる。均一の撚りで造られたこよりは硬く、しなやかだ。

そして拙者は目を開けると、鎌をゆっくりと振りかぶると、目の前の敵に意識を集中する。
「ソウル(魂を鎮める)―――」
一気に振りぬく。
「―――バニッシュ(烈破の一撃)!!」

瞬間、それまで拙者の体内に発生したことのないエネルギーの奔流が生まれる。低く重い唸りをあげて全身を駆け巡るソレはまるで暴風のように荒れ狂う。巨大な力をねじ伏せ、刃筋に意識を集中する。するとその力は自然と濡れた刀身に収束していく。荒れ狂う力が何かをごっそりと奪っていく瞬時にセルフチェックプログラムが警告をあげた。HPが急速に減少。いや、吸い取られている。これが代償か!

その瞬間、刀身に変化が生じる。纏わり着いていたD型フォトンが増殖した。まるでその刀身から流れ出すように。そしてソレは球体となり、敵に向かって一直線に飛んでいく。

ぽよん・ふよふよふよ・しょり・ふよふよふよ

「……」
「……」
「……ぷ」

三人は沈黙した、だがその沈黙は二種類に分かれていた。驚愕と、失笑をこらえるのと。
てか、最後に笑ったろ、シャルテ殿。

なんだ、なんだこれは? 今なにが起こった。
おちつけ、おちつけ拙者。そう、先生も言っていたではござらんか「困難な出来事に出会ったら、まず落ち着いて、それからよく考えること」と。
よし、では落ち着こう。落ち着けば、落ち着くとき。落ち着いた。
そして良く考える。
オーライ。まず拙者が手にしているのは? ソウルバニッシュだ。
そしてそのEXは? 無論メギドだ。
では拙者は今なにをした? ソウルバニッシュを使い、EX攻撃を行った。
その結果導き出されることは? 拙者はメギドを撃った。ERRER!
違う。アレは違う。アレは拙者の知っているメギドではない。
OK、ではそこを検証しよう。
まず、紫色の球体を発生させた。あれはD型因子か? YES
アレの大きさは? 直径約12cm。
アレの発生後の動きは? 直進して、敵を貫通した。
アレは敵を殲滅したか? NO
アレは敵にダメージを与えたか? NO!
アレは敵を活動停止にしたか? NO!!

「結論、これはメギドではござらん」
「い、いや、メギドだから…」
シャーウィン殿が涙声で拙者に突っ込みを入れる。だがそれは無論、笑いをこらえての涙声だ。
「ざ、ZANさん、絶対、メギドってあーいうの考えてたでしょ?」
※あーいうの=ハカセとかのアレ
「うむ」
「……」
「……ぷぷっ」
だからおかん! それすっごいきっついでござるよ!
「…ち、ちがうのか?!」
「だ、だからね、そのソウルバニッシュが撃てるの、Lv3メギドなの」
「れべるさん…ではその…あれは?」
※※アレ=ハカセとかのアレ
「アレは…ん、Lv28~30かな?」

なるほど、それだけ差があるのか。納得。解を得た。

拙者は手にした鎌をじっと見つめた。
―――Trust me, my master. (我を信じよ)

我が意を得たり。
再び構えを取る。
「ざ、ZANさん?!」
一意専心。明鏡止水。スーパーモード。
もう雑音は聞こえない。

「うおおおおっ!」
振るう。力を込めて振るう。
ぽよん・ふよふよふよ・しょり・ふよふよふよ
だが敵は倒れない。

「うおおおおっ!」
振るう。渾身の力を、魂を込めて振るう。
ぽよん・ふよふよふよ・しょり・ふよふよふよ
だが敵は倒れない。

「うおおおおっ!」
振り上げる、シャルテ殿が一心に捲っていた薄い本を、あるページでぴたりととめた。
「あ、ブータって闇耐性85もあるんですねぇ」
ぷつん。ぱたり。
倒れた! …拙者が。
「あ、それいい気になって使い続けるとHPが0に…って注意する前に倒れてる?!」
拙者はこうして赤い淵に沈んだ。

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