誰だお前は!?

その日、ゲルベゾルテを出港ゲートの向こうへと見送ると、拙者達はタクシーで家まで向かった。
「で、あやつ今度はなにをするんじゃ?」
「なんか映画に出るとか聞いたでござるよ?」
助手席に座るDANにそう応えて横を見ると、Selpaが釈然としない顔で俯いてた。
「どうしたのでござる?」
「いえ…任務で来ている私がこうして見送るほうの立場になるとは…ちょっと複雑な心境でして」
「それはそうか…ま、まあ明日から2倍でござる。がんばれ(汗」
「はぁ…」
なんか日増しに影が薄くなっていく彼女。大丈夫か、こんなので。
拙者がそう心配したところで、タクシーは家の前に着いた。と、そこにスペースヤマト便のトラックが止まっている。
「はて? ゲルベゾルテの荷物は全部出したはずじゃがの?」
彼の荷物はほとんどが整理された。多くのアイテムは今度新人としてELD殿の所に来たハナさんこと、華浅葱殿が使ってくれることになった。実はこの女性、拙者とは本星にいた頃に些か縁があった。まさか彼女とパイオニア2で再会することになるとは…人生とは不思議なものである。
ともあれ、荷物の整理はすでに終わっている。では一体なんであろう?
「あ、どもー、チワッス。スペースヤマト便です」
「ああ、ご苦労様でござる」
「ZANさん、IDは…で、間違いないですか?」
「うむ。相違ござらん。…拙者宛でござるか?」
「ええ、差出人は…あれ? ぬけてるな。データミスかな?」
運転手のアンちゃんが慌てて自分の端末を調べ直す。
拙者は荷物の方をちらっと見て、その表面に無色印刷されているコード表で確認する。
「ああ、構わんでござるよ。こちらで受け取るでござる」
「え、いいですか、いやぁ、助かります」
胸をなで下ろしたアンちゃんが、愛想笑いを浮かべつつ受領書を差し出す。
拙者はサインとデータ刻印をうち、商品を受領した。
「一体なんです、ZAN。ずいぶんと大きな荷物ですが」
商品は拙者がすっぽり入るほどの大きさの箱で、白い紙で包まれている。
「うむ、里から試験用の外装を送り付けてきたらしい」
「里? 外装?」
「ああ、拙者の製造元の事でござる。で、中身はラグオルで用いる追加兵装システムの基本パーツ一式でござるな」
拙者は紙の表面に描かれたパターンコードを解析しつつ応える。普通の人間が見たら用紙の表面に多少のむらがあるようにしか見えないが、そこには梱包ぶつの概要、開封手順から里の懐かしい面々のメッセージまで、明確に刻まれている。
どうやら皆元気らしい。安心する。
「なるほど、つまりその中には特殊な兵装が入っていると?」
「まあ、そおでござるな。要するにこれは拙者の基本仕様を…いや、説明するより実際に着けた方が早いでござるな」
拙者はそう言って受け取ったカーゴを搬送機に載せてもらうと、ジャッキアップで拙者の部屋に直接放り込む。
「じゃ、行ってくるでござる」
バタン(玄関)。パタパタパタ(足音)。パタム(ドア)。ピカァ!(閃光)
「うお、目が、目がぁ!?」
「DAN、あなたのヘルメットは対閃光防御も兼ねていると記憶しています。おふざけは大概に」
「…乗りが悪いのう。そんなこっちゃ適齢期逃がすぞい?」
「……なにが?」
「い、いや何でもない! 何でもないからカスタムレイをしまえ!」
パタム(ドア)。げんげんげんげん(足音)。バタン(玄関)。
「や、お待たせでござる」
拙者がしゅたっと手を上げると二人(なぜかジジイが額に銃を押し付けられている)が異口同音でこう言った。
「「…だれだお前は」」
見事に声がハモってた。仲いいんじゃないか? ほんとは。
「誰って、拙者でござ…ああ?!」
拙者は言われて気がついた。これでは二人が分からないのも無理がない。

「なんでカラー設定が白なのでござる!」

二人は突っ伏した。
「い、いや、そうじゃなくて。その形のほうじゃ!」
「そうです、ZAN(仮定)、それはどう見てもRaCastです」
「ん、そう見えるなら問題ないでござるな」
拙者は恰幅のよくなった肩を揺すらせて誇らしげに頷いた。
「これは拙者の追加装甲状態でござる。要するにRa用装備を装着する為のアタッチメント装甲でござるな…色が白く設定されているのは…開発者の趣味らしい。『フルアーマーといえばこの色だろう』と…なんのことでござろうな? …あれ? 二人とも、どうした? 頭抱えて」
「「…まちがってるからそれ」」
「…な、なにも間違ってないでござるよ? 今の説明で―――」
「何を言っているんです。フルアーマーといえば白ではなくグレーでしょう。スプリット迷彩にするのも良しです」
「いやいや、フルアーマーといえば元祖、緑じゃろう!」
?? なんのことだ?
「ぬう、DANあなたのセンスは古すぎます。そもそもあの緑もアーミーカラーをそのまま持ってきたリアルタイプ嗜好の流れ、ただそれだけではありませんか。あの大きさで低視認性迷彩効果を狙ったとでも?」
「なにをいうっ。それを言ったらあのグレー装甲は装着運用試験用に過ぎず、増加装甲というのもおこがましいではないかっ」
「あ、あのー、二人とも一体何を…」
「それにあのミサイルベイってなんです! あんな狭い中になにが入っているって言うんですかっ!」
「めったやたらに装甲着けて変形機能阻害するような粗悪品が! だいたい増加装甲の癖に基本装甲から丸ごと交換してしまって、どこが増加装甲じゃ!」
うわぁ、二人ともめちゃめちゃヒートアップ……銃まで取り出しちゃってるよ。
…またご近所さんから苦情が来る前に、ラグオルに出かけるとしよう…。

スポンサーサイト

Comment

Comment Form
公開設定

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。