大都会騒動顛末記 第一話 「スペース品川騒動」

その日、拙者たちはいつものハンターズ区画ではなく、一般区画へ、それも大都会Ship1のスペース東京駅へと向かっていた。
8月14日 午前11時30分 Ship1内スペース東京駅
「や、ZANさんおはよー。…ってどうしたのその格好?」
普段見慣れたFoの装束ではなく、一般区画用の普段着を着たアスバルが怪訝そうに拙者を伺っている。
今日は拙者も一般区画用に装甲を外しているのだが、けしてその格好が珍しかったわけではない。

拙者の膝から下がずぶ濡れだったからだ。

「いや、ガルダバル島から直行してきたのだが…出がけに雨に降られたのでござる」
「え? 観測所ではあの区画はここ一週間雨は降らないって…」
「おう。そのはずだったのだがな、ご覧の通りでござる」
拙者はずぶ濡れの折り畳み傘と足元を差し出し肩をすくめた。
「なんか初っ端からついてないねぇ」
「それだけではござらん」
「…なに?」
「ハカセからメールが着てる」
「なんて?」
拙者は携帯コミュニケーターを取り出し、ハカセからの文面を順々に見せた。

AM06:38『只今より出発する(電車の中)』
AM07:11『うわは、一度電車間違えたが順調』
AM08:51『なにやらヤバイ気がする』

「…兄さん…一体なにを」
呆れた顔でそういったのはいつの間にか到着していたフィロだった。
アスバルも当然、拙者と同じようにげっそりとしてる。気分としてはガルダバル島でヒースクリフ・フロウウェンの手記を紐解いていくのと似ている。
「なんかさー、朝ZANさん大雨に降られたらしいよ?」
「雨…こんな天気いいのに?」
拙者はその言葉に無言で傘を見せると、三人同時にため息をついた。
「「「天災だからねぇ」」」

「で、どうなったの?」
「うむ、拙者が『何があったのか』とメールで問い合わせた」

AM09:09『結局5回乗換えをするルートになった(汗)。いや、最初の特急を間違えてしまった』

「致命的ジャン!」
拙者もそう思うぞ、アス。

AM09:15『と、とりあえず聞き込み戦法でスペース東京行きのハイパー新幹線に乗った。
    …駆け込み乗車で』

「…よかった、兄さん一応乗れたんだね。で、到着時間は?」

AM09:24『11:53だ』

「ラフより遅いジャン!」
アスバルが叫ぶ。もともとの計画ではハカセの到着が11時半、ラフが11時30分となっていた。
「兄さん…で、でもまあこれで確実にスペース東京駅に着くんだから! ネ!」
「…ZANさん?」
拙者は重苦しい面持ちで首を横に振った。
「ヤツは、来ない、いや、来れないのでござる」
重々しい、まるで池上良一の激画のようなカオでおもむろに次の着信メッセージを見せた。

AM10:50『切符を見たところ、スペース品川とか書いてあるがよろしいかな?』

「……」
「……」
しばしの無言…そして…。
「ウフフ…兄さん…兄さん…兄さん…」
「ああ! フィロが反転した!?」
「おおお落ち着くでござるフィロ! こんな一般区画でフォトンを収束させては…ってなんか黒いフォトンだしっ!」
慌てて二人がかりでフィロをなだめる。
「と、とにかく今、スペース東京駅で降りるようにと言い含めたっ! だがその後に座席指定だった場合、スペース品川で降りないと乗車代+座席指定代金が発生してしまうやもしれんと思い至ったのでござる。その場合、パイオニア環状線マウントハンドを使って移動しないとならぬが土地勘ゼロのアヤツのことだ、必ず迷う!その際はスペース品川まで迎えにいくと申し付けた! もうすぐ返事が―――」
(ぴろりろりん♪)
拙者たちは食い入るようにしてコミュニケーターを覗き込んだ。

AM11:25『すまないな…。改札口に、了解した』

「「「…どっちだよっ!」」」
気がつけば、全員で突っ込んでいた。

つづく…!

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