大都会騒動顛末記 第三話「遅れてきた男」

ハカセと何とか合流した拙者たち、だが最後の難関、ラファエルがまだ東京駅でさまよっていた。
「で、今どこにいるでござる?」
『えーと、ハイパー新幹線降りて乗り換え改札ってところにいる』
「…それがどこだか聞いているのだが」
『ハッハッハッ。…わからん』
「……」
『20番線おりたとこなんだが』
だからそれ、なんの役にも立たない情報なのだが…。
「中央とか南とかあるのだが…」
『んー中央とか書いてあるな』
「中央乗り換え口でござるな?」
『ワフ』
「分かった。いまから皆で行く」
拙者はため息とともにコミュニケーターをしまいこむと皆の顔を見やる。どの顔もまるでチャレンジモードをマラソンで終えた後のようにぐったりである。
「が、がんばるでござる。ここで何とか合流すれば食事にありつけるでござるよ」
そう言って皆を連れてぞろぞろと移動。体力的に限界に近いフィロとハカセ。くっ、これだからFOという連中は…。
「アス、おぬしは存外に元気でござるな」
「んー…ペース配分してるからー」
などと修学旅行に出かけた寮生の様なことをのたもうた。よく分からんが大丈夫らしい。
そして、中央乗り換え口へと到着。コミュニケーターをとり出す。
『ワフ?』
「…いま改札の前に立っているのだが…」
『どこだ? みえねぇぞ?』
「拙者からも見あたらぬな…ハテ」
拙者が首をかしげてるとアスバルがくいくいと裾を引っ張った。
「そういうときはね、ZANさん、こうするの」
アスが拙者の端末を奪うと大きな声でこう命じた。
「ラフ、”おまわり”!」
『ワフ!』
コミュニケーターから、勢いよくターンを決める気配が感じられる。
が、駅構内の見渡せる所にターンを決める犬は見当たらない
『…はっ?!』
「なあ、おぬし本当に中央乗り換え口にいるのか?」
『中央乗り換え口? 南でなく?』
ちょっ、おまっ?!
『南乗り換え口にいるぞ?』
「…南乗り換え口でござるな? わかった。そこを動くな。息もするな」
『そ、それは無理ーーー』
「ではそこで回ってるでござるーーー”おまわり、つづけ!”」
拙者はがっくりと肩を落として皆に移動を告げる。
なんだかアレだな、引率の先生というよりは奴隷商人にでもなった気分だ。
そして南口乗り換え口に到着したところ、くるくると回る犬を発見。
こうしてとうとう全員がそろった。
なんだか少し疲れた、拙者、HucastのZAN。
割と元気だけどげんなりとしたアスこと、FOmarのアスバル。
すでに限界という感じで蹲るウィケッドの双子の弟、FOmarのフィロ。
来たばっかりで大都会に圧倒され疲弊しているハカセこと、FOmarのウィケッド。
ぐるぐる回って目を回して疲れてるラフこと、RAmarのラファエル。
以上5名が今回のパーティーである。

「よ、よし、それではまず第一の目的地に向かおう」
「まずはHP回復だね」
アスバルのその言葉にぴくん、とハカセが顔を上げる。
「あー、ZANよもや油(ゆ)とか油(ゆ)とか油(ゆ)とか言うまいな?」
ハカセが恐る恐る尋ねる。此奴はいつも拙者の後に入ると回復装置の湯が油になると騒いでいる。
…オイル風呂は間接の汚れがおちていいのでござるよ?
「油(ゆ)…まあ、油(あぶら)といえば油(あぶら)でござるな」
「…だねぇ」
拙者とアスが顔を見合わせる。
「あー、私はそんなに疲れてないから、お前らだけで入ってこい」
「まあまあそういわずに」
(むんず)
「ついてくるでござるよ」
(ずりずりずり)
「ば、ばかっ、これは着いてくるというか引きずって…こ、こすれて痛い痛いっ!」
そうやって駅を出るとむわっとした熱気が拙者達を迎えた。見上げれば大きな太陽…。
「…夏だねぇ」
「…夏でござるな……なんであんな雨降ったんだ?」
「あついよー。とけるよー。兄さんなんとかしてー」
「ふ、ふむ、といわれてもこればっかりは(汗。そ、そうだ天才印の扇子を…」
「ワフ。天災さん準備がいいな」
「天才!」
いつもの口論ーーーまったく、なんでハカセはいつも自分のことを間違えるのでござろう? おぬしはどこをどう斬っても天災だというのにーーーを聞き流しつつ、炎天下の中を歩くこと数分。
拙者達は目的地に到着した。

「…ここは?」
ハカセが訝しげに尋ねる。まだ油を警戒してるらしい。
「ここは油の専門店ーーーではなく、餃子専門店でござる」
そう拙者が言うとぴん!とラファエルがしっぽを立てた。
「おお! 佐助! ということはこれで夢が実現するんだな!!」
佐助というのは拙者のことらしい。なんでも最近ラフがはまっている「戦国バサラ2」とかいうゲームにそういうキャラが出てくるとか来ないとか。
そもそも今回の都内観光の発端はラフが夢で、「佐助と正座して向かい合って餃子を食べて、その味付けについてあーだこーだ言い合いをした」というのを見た、ことだったりする。
だったらそれを実現させてしまおう、ということで企画されていたのだ。
単純に餃子を食べるだけだとつまらないので、他にも観光と称して都会に繰り出そうというわけである。
ともあれ、まずは目的の餃子を頼んでまつこと数分。女性店員が餃子を運んできた。
「おまたせしました~」
拙者達の前に並べられていく餃子、餃子、餃子…。机の上一杯に餃子が並ぶ。
「ではいただき…どうしたでござる?」
拙者は箸を手にしようとして、ラフが眉をハの字にしてるのに気がついた。
「ラフ…?」
「佐助ぇぇ。これちがうぅぅ」
「違う? なにがでござる」
「俺が考えてたのはこう、どーーーん!とでかい餃子あ」
拙者が首をひねってると横でアスの頭に豆電球が灯った。
「一個で30個分とか、そういう奴?」
「ナイスマメ! それだ!!」
「マメ言うな!」
「ナイスガ~イ」
きいちゃいねぇし。
「フム、まあおぬしの言いたいことは分かった。だがな…」
「ナンだよ?」
「今回のメンツをバッと見渡してみろ、どう見ても食が細そうなFOが圧倒的でござる。ジャンボ餃子など無理難題に等しい」
拙者の言葉にラフの隣に座ったフィロがうんうんと頷きつつ、小さな餃子を頬張る。
「それにおぬし、ジャンボ餃子に幻想を抱きすぎでござる」
「どうしてさ?!」
「…考えても見よ、ジャンボ餃子は包む皮は大きくなっているものの、比率的には圧倒的に肉が多い。最初の一口二口は皮と一緒に食べられるから餃子の食感だろうがーーー
「だろうが?」
「ーーー真ん中の方は間違いなく、餃子の味がする炒め肉だけ、を延々と食べ続けることになるでござるよ?」
「………そだね」
よかった、犬の想像力でも絵が描けたらしい。
「まあ、何事も程々でござるよ…」
そう言って拙者も餃子に箸をつけるのだった。

しばらくすると、今度はフィロが口を開いた。
「アス、なんか苦戦してるね…」
言われて見やると確かに苦戦していた。餃子相手に。
餃子が隣同士でくっついてしまっている為、箸で割こうとするのだが、それがどうもうまくいかず、となりの皮を破ってしまい、肉が皿の上に零れ出してしまっている。
「う、うぐっ。う~~~~!」
「ZANさんと比べると偉い違いだよ?」
確かに拙者のほうは、皿の上はきれいなものである。といいうのも比較的素直に皮と皮が離れてくれたからだ。ちなみにアスと拙者は同じメニューである。
「フム、たしかに苦労してるな」
ハカセもふんふん、とのぞき込む。
「兄さんは…普通だね」
悔しそうにアスが言う。
「フ、天才だからな」
もはや誰も突っ込まない。アスは気を取り直して箸を持つ。
餃子と餃子の間に差し込み。
「……」
皆が見つめる中、一気に割く。
「あ、破れた」
「ワフ」
「破れたでござるな」
「フ、甘いな」
皆の声に一言も返せず、肩が震える。
「う~~~~~っ!」
割く。破ける。割く。破ける。割く。破ける。
「…えーと、アス、多分その、そっちの餃子の焼け具合がこっちと違ったのでござるよ」
さく、ひょい、ぱく。
「もぐもぐ…だから気にすることないでござるよ。うん」
「ZANさん、そんなに匠に箸使っておいて言うセリフじゃないと思うよ、ボク」
「んだ。『はねるのトびら』の「回転SUSHI」のコーナーに出れるんじゃね?」
なんですか、それは? すると拙者のゲスト名は…ロシア代表「ZANギエフ」??
「うわぁぁぁんっ ZANさんなんか筋肉マッチョに椅子回されちゃえばいいんだーー!」
アス、頼むから店内で叫ばないで下され。

つづくー。

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