大都会騒動顛末記 第五話 『見ろ、人が…』

ファミレスで涼を取り、なんとか回復した拙者達は今度はパイオニア東京タワーへと向かった。
ちなみにタワー見物はハカセからお題として頂いたものである。
まあ、せっかく都会まで来たのだからたまにはいいでござろう。
「しかし拙者、ここへ来るのははるか昔以来の気がする」
大体、名所、名跡というものは地元に住んでるととんと縁の薄いものになりがちである。
「そういうもんだね…まあ東京タワーは333メートルで高さは昔から変わらないしねー。
でも地上波デジタルの為のアンテナが…」
アスは同意しているが、その知識は拙者とは格段の差があった。
さすがタワーから実家迄の距離が誰よりも近いだけのことはある。
「で、特別展望台にはこの途中の四角い展望室で料金を払って、エレベーターを乗り換えていくんだ」
「フム、左様でござるか。ではまずはそこへといってみよう」
時刻はすでに5時近く、夕闇が迫ってきていた。展望室から見下ろすにはちょうどいい時間帯である。かくして拙者達はまず、展望室へと向かう大型エレベーターに…乗ろうとしてその来客の多さに驚いた。あまりの人の量にフィロも思わず圧倒される。
「ZANさん。きょ、今日って平日だよね」
「う、うむ。そのはずでござるがーーー」
「お盆だからねー。観光客も多いみたい。ほら、外にキティラッピングのバスも来てるし」
アスの指さすほうにはなるほど、たしかにキティ柄のバス(カナリ嫌)が止まっている。
「あれ、元々は東京駅から東京タワー巡回してる鳩バスなんだよー」
やっぱりやたらと詳しい。
映画の封切り宜しく、延々と並ぶ列に続いてエレベーターに。
ぐんぐんと上っていく。途中も景色が見えて気持ちいい。なにせ鉄塔である東京タワー。見晴らしは360°、大パノラマ(死語)である。
「おお、でかいなここも」
ハカセがご満悦のように呟く。
「たしかに大したものでござる」
「でも上からだともっといい眺めだよ?」
アスの言葉にラフとハカセが目をきらきらさせる。
「よし、いこう」
特別展望台にはこの大展望室からさらにエレベーターに乗らなければならない。
拙者達はまた数分並び、エレベーターに載ることになった。
寿司詰めのエレベーター。だが搭乗列はちょうど拙者達のグループを二分する形で仕切られてしまった。
「はい、じゃあ此処までですねー。後の肩は次のエレベーターでお願いします」
太った職員がそう言って列を切ったのはちょうど拙者の後、ハカセとアスが残される形であった。
「な?! 私とマメくらいのせられるであろう?! というかお前が太ってるから一度に乗せられる数が減ってるんじゃないのか?!」
「はい、じゃあ上にあがりますー」
「こ、こらまたんか!」
だが無情にもエレベーターはそこで閉じられるのであった。
「では、上に参りますー。途中がたんと揺れることがありますが、仕様ですのでご安心下さい」
へ?
ガタン
「ワフ!? だ、大丈夫か?」
「大丈夫だ」
ガタンガタン
「…と思うでござる」
「ホントか?! ホントだな?!」
「わー、エレベーターからもいい眺めだよー? うふふ」
フィロ殿はマイペースでござった。
で、上がり着いてみると確かに絶景でござった。時期的に人が多く、アベックが二人だけの固有結界を作り上げようとしてたり、それを元気に駆け回ってく子供たちがブロークンファンタズムしてたり。子供を抑えようとする爺婆が天国に一番近いところでお迎えが近づいてきてたりしていた。
だがそれらを忘れさせるほど、素晴らしい眺めであった。
「ワフ! 人がゴミのよう!」
ラフ、しっぽふりすぎ。
そうこうしていると次の便が到着して、アスとハカセが吐き出された。
「ううう、ひどい目に遭った」
「なんだ? どうしたでござる?」
「いや、戦力的に分散されたおかげで少々…く、大体なんだあの太った添乗員は?! あやつが乗ってなければ我ら二人位ちゃんと乗れたであろうに!」
ああ、それは拙者も思ったさ。
「まあ、ハカセ、すんでしまったことはしょうがない。夜景を楽しむでござるよ」
さて、展望台といえばどこにでもあるのが時限式の双眼鏡である。昔から子供の小銭を巻き上げるニクイ機械である。
「ふむ…近ごろの望遠鏡はカメラ式なのでござるな」
ここに設置されているのはのぞき込むタイプではなく、複数人数で観賞できるモニタカメラ式になっていた。電子ズーム。オートフォーカスタイプの優れものである。
「これは見るしかないねぇ」
「だな」
拙者とアスは嬉々として小銭を投入すると、モニタに夜景が映し出される。
「おー」
「でもちょっと面白くないな…」
「ワフ! 花火!」
え?と振り返ると確かに北の方で花火があがっている。
「アスバル!」
「はいはい~♪」
ささっとアスバルがそっちの方に望遠鏡を向ける。が、あまりに遠い為ちょっとぶれるとすぐにファインダーから花火の地点が逃げてしまう。拙者はそれに気がつくとがしっと望遠鏡の筒を固定した。
「これでどうだ?」
「ばっちし」
こうして、夜景を楽しんだ後、拙者達はタワーを後にした。
すでに日は堕ち、とっぷりと暗くなっていた。

つづく・・・

スポンサーサイト

Comment

Comment Form
公開設定

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。