CAPTAIN DAN #03 決戦! 天災ウィケッドの罠!!(後編)

対決、そして
カランコロンカラン♪
ドアの上に付いたカウベルが来店者を伝える。喫茶店ハイランド、そのマスターであるハイアームズが振り返ると
、そこにはリューカの逆光を背に細い孤影が立っていた。
黒いフォース用のローブの小脇にケーキのコンテナボックスを抱え、青白い顔はなにやらいつもより上気している。瞳はキラキラと輝き、細く長い眉は喜びに踊るようにキレイなカーブを描いている。
「ハッハッハッハッハ…! 自然と笑みがこぼれるね!」
覗き込んだ店内には、なんだか店先を気にするマスターと、口を大きく開けて驚いている千吏であった。
「お、翡翠とZANがいないな…よぉし、ささ、千吏今のうちに―――」
「そこまでだハカセ!」
鋭い声がテーブルに飛ぶ。
「ぬ?」
顔を上げたウィケッドの視線の先に、カウンターでコーヒーをたしなむスペースマンがいた。
「貴様! …DANか!!」
「そう、レンジャーのDAN。貴様のケーキを食べてこうなった貴重な例さ」
「いや、いっぱい例はあるが…まあ、生きていたのはめずらしいな」
ぼそりととんでもないことを言うウィケッド。
「何故貴様がここに…クッ、あのアンドロイドめっ」
「ZANから全てをきいたぞ。その悪魔の食べ物、けして未来ある少年に食べさせるわけにはいかん!」
「いやいや、未来があるからこそ、だ」
「む…?」
「なあ、千吏よ。強くなりたいのであろう?」
「ほよ! 強くなりたいっす!」
力強く答える少年に、天災は我が意を得たりと頷いた。
「そう、ならばかなえてやるさ」
そこでDANが割って入った。
「ではハカセ、天災と名高いオマエのことだ」
「天才!!」
「どうせ用意したケーキは一つではないのだろう?」
「無論…なにがいいたい? たしかにここにケーキ・チョコ・キャンディの三種類で―――」
「ではその一つをオマエに食べてもらおうか?」
「―――倉庫の品を合わせると36個になるが。……まて、何故そのような必要がある?」
「なに、そのその効果を彼に知ってもらうには一番だとおもったのだがね?」
二人の間に見えない火花が飛び散る。
「…フ」
不敵に微笑んだのは天災の名を欲しい侭にする科学者だった。
「ならば良いさ、食って進ぜよう」
「……」
DANは無言、だがその頬には一粒の汗が流れている。
ウィケッドは内心してやったりと思っていた。
フ、考えが甘いな。…こんなこともあろうかと、ダミーとして普通のケーキを作っておいたのだ。
『こんなこともあろうかと』それは科学者にとって誰でも一度は夢見る名台詞である。それを使えた喜びをかみしめつつ、ウィケッドはケーキの入った紙箱を二つ。テーブルの上に置く。
「はわ。これが師匠の手作り!!」
千吏が覗き込むと確かにそこには一つづつ、ケーキが入っていた。
「ふむ、では…ハイアームズ、厨房を借りるぞ」
DANがその箱をひょいと取り上げる。
「こ、こら、なにをする!」
「なに、ちょっと皿に盛ってくるだけさ。座って待ってろ」
「……ぐ」
「♪~」
「さ、待たせたな」
二人の前にケーキを出す。
「…あー、DAN、どっちがどっちの箱に入ってたかね?」
「ん? なにかそれが関係あるのか?」
「いやいやいや、なにもないぞ、うん!」
「でもすごいおいしそうですー」
千吏が嬉しそうに手を出す。
「ああ、いつもみんなで作ってるからな」
「皆?」
「なるほど、BPって内職してるのか、ヒマな時は…」
ハイアームズの一言で皆の頭の中にメレンゲをかき混ぜるスゥとかチョコレートを湯煎するキリークが浮かぶ。
「内職…」
DANがうなる。
「…いや、それはちがう」
ウィケッドも頭を抱える。
「お師様も苦労してるんですね…」
「せ、先月のMAの件で減給されたのだよ…」
(※筆者注:この件について詳しくはウィケッドのブログを参照されたい)
「大変だな…ハカセ」
「大変ですね、天災さん」
「大変ですね、お師様」
「うむ、給料がいつもの半分くらいだったナ…って 誰だ! いましれっと天災といったのはっ!」
吼えるウィケッドをしれっと無視して、ハイアームズが小首をかしげる。
「…むしろ半分で済んだほうが奇跡だと思うのですが」
「フン! 結果は良かったからなっ」
そう言って胸を張りつつ、チラリと二つのケーキを見比べるウィケッド。
どっちだ?どっちのケーキがアレだ??
印として柄の違う透明フィルムでラップしておいたのだが、それは取り払われている。
く、この身はD因子研究に明け暮れた身、どこかに違いを見つけることができるはずだ。どこかに…。
考えろウィケッド! この私の天才の脳細胞を使えば必ず打開策が浮かぶはずだ!!
逡巡した後、ハカセは結論を述べた。
「千吏、先に食べろ」
ずいぶんと浅い結論だ。だがその一言を言い終わる前にDANの鋭い声が飛ぶ。
「千吏殿、まだダメだぞ! …ハカセが食べてからだ」
「は、はいですっ」
そう、ハカセが来る前にハイアームズが聞いていたのはまさにそのことだった。彼は絶対に、ハカセより先に食べないようにと、それだけを千吏に言い含めていたのだ。
「な、ならば同時に食べよう!」
「!」
「!!」
DANとハイアームズの顔に緊張が走る。マズイ、その選択は千吏が否定できない。
二人の慌てる様子をチラリと見て、ウィケッドは自分の判断が間違ってなかったことを確信する。
「はわわ」
「さんにーいちで、放り込むのだぞ?」
「チッ、往生際が悪いぞ、ハカセ!」
そのDANの焦った声を聞いて、ウィケッドは自分の勝利を実感した。
やはりコイツもどっちがD因子いりでどっちがダミー入りかを判別できてはいないっ!
「3・2・1・0!」
ひょい、ぱく。
ほぼ同時に、二人がケーキを口にする。
もっきゅもっきゅもっきゅ、ごっくん。
「…千吏くん!」
ハイアームズが思わず声をかける。その瞬間。
「がぁっ!」
千吏が苦しげに喉を押さえた。
ごっくん。
「ふははは! 千吏、よくぞ食した! これでオマエは強くなるぞ! …運がよければ」
「く、ハカセ、やはり!!」
「残念だったなDAN! こんなこともあろうかとダミーのケーキを用意してあったのだよ!」
高笑いするハカセ。
「まあもっともだ、この帽子のほうで侵食度を調整して、抑制MAXにしてたのでな。私はそう簡単にはD因子に犯されることはないのだよ」
勝ち誇って帽子を脱いで装置を見せる。そこにはD因子研究により開発された最新の抑制装置が

決着
「……ハカセ」
千吏に覆いかぶさるようにしていたDANがゆっくりと顔を上げる。
「その帽子を外して…気分はどうかな?」
「…なに?」
「千吏くん、もういいぞ」
「ハイ。 お師さま! ガッツり美味しかったです!!」
「なっ?!」
「安心したまえ、そのケーキはゲルベゾルテという、オレの身内の本星みやげさ」
「えー」
「いい演技だったぞ。アカデミー賞ものだ。言いつけを良く守ってくれた」
「いいつけって…一体いつの間に?」
「なに、コミュニケーターでちょちょっとな…」
その言葉ではっとハイアームズが気がつく。
「…俺までひっかけましたね?」
DANがしまったという感じで肩をすくめる。
「敵を騙すにはまず味方から、だろう?」
そう、ハイアームズがこのことを知らなかった為、同時に食べるといわれてDANが驚いて見せたのが真実味を持ったのだ。
「だがそれで上手くいったようだな、ハカセ」
「・・・ぐ、自制、自制、自制!」
「ああ、ちなみに今オマエが食べたのは―――」
DANは不敵に笑う。
「―――オレの食べ残しだ」
「ぐ、ふっ! 廃棄shiたnodeは無kaったのか…」

さらば、宇宙の男
バタリ、と倒れた途端にウィケッドの体が光に包まれる―――強制転送されたのだ。
「最後の力を振り絞ったか…! あるいはBPのプロテクトか…」
「大丈夫ですかね…」
「さあな…無論D因子により何らかの変調をきたし、一週間くらいは変質でなりを収めるだろうさ、でも…」
ハイアームズに向かってDANが首を振る。
「でもこれが最後の天災とは思えない…」
「ええ、だけど『影あるところに光あり』ですよね」
その言葉にDANは苦笑で、そうだな、と答え、ため息をついた。
「だが…」
DANの顔に蔭が生じる。
「どうやらオレはここまでのようだ」
その言葉にハイアームズがはっとする。今のDANのありようは過去のソレである。D因子入りのケーキによって起こされた仮初の姿に過ぎない。そしてその刻限が迫っていることを、彼はひしひしと感じている。
もう、残された時間はあまりに少ない、いくつか手を打ったが、それも心もとなかった。
「DANさん…」
だから、後は託すしかなかった。
「頼む、ハイアームズ。これからも見守ってやってくれ…」
「…はい」
ハイアームズは静かにそして力強く頷くのであった…。

こうして、DANはまた伝説の中へ帰っていった。

だが―――

平和を願う人々が彼を必要とする時…
大船団の頂点にフォトンブラストが灯る時…彼はまた、現れる。
レイマーのDAN。パイオニア2移住計画に参画した若きスペースマン。
政府に属さず、軍に属さず、孤高を愛する一介のハンター。だが人は彼を―――

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