大都会騒動顛末記 六話 ハカセの策謀(その2)

「うなーーーーー!」
突然雄叫びを上げるアンドロイド。
「く、こ、この!」
「ウフw」
「ち、ZANの意識が目覚めたのか?」
全てのセリフが小刻みに震えるアンドロイドのスピーカーから流れる。
「…ZANさん??」
「ぐ、なんとか」
「してくだされ」
苦しげに呻くZAN。だがすぐにそっけない声がそれに続く。
「いやぁ、大丈夫でござるよ」
「ラフと、ハカセがはっきんぐwo」
「ハッキング、というよりはキーボードの奪い合いのような」
そう、そのアリアンロッドの呟きはまさしくこのとき、電脳空間で行われる熾烈な主導権(キーボード)の奪い合いを言い当てていた。
「くっ、ハカセ! なにをしてくれたでござる!」
「我が研究の礎になれることを喜ぶがいいっ!」
「そうだそうだー」
「よろこべるかーーー!!!」
だがそんな熾烈な争いも、外で声だけ聞いている分には間抜けなだけである。なんせ音声は全てZANの物なのだ。できの悪い小話を聞いているような、一人漫才を観ているような感覚である。
「なんか、楽しそう、ですね?」
「ウフ」
「楽しくないッ」
「楽しいぞ?」
アリアンロッド殿がふう、とため息をつく。
「良かったね、ラッフィ」
「ウン」
「てか、ラッフィって誰でござる?」
だがそれにはアリアンロッドは応えず。てくてくと次のエリアへと向かっていく。
「ちょうどサイコウォンドを探していましたので。御花畑へ参りましょう。
「承知でござるぅ」
「ぅをつけるな、ぅを!」
「好感度アップでござるぅ」
「んなわけあるかぁぁぁっ!」
カナリやかましいスピーカーアンドロイドを引き連れて、アリアンロッドが洞窟へと降り立った。
真っ先に出てくる花、花、花。
麻痺攻撃! だがアンドロイドはその攻撃を無効化できる。
「おおおお! 麻痺しない! 麻痺しない!」
「いや、ロボだから当たり前でござるが…」
「フム、なるほどな…あああ、武器をシンセサイザーから変えるなッ」
やかましいことこの上ない。
「えーと、主体は犬なのかしら…?」
「…ハテ?」
「おいおい、半角の時点でばれてるだろう…犬」
「犬じゃねぇ天災」
「天才! ジーニアスのほうだ!」
「…次ぎ行きますか。もっとこう、極限な奴に」
ニヤリとアリアンロッドが笑う。
「ええい、どっちもやめいっ って極限な奴ってこんな状態ででござるか!!」
「もちろん♪ だからこそいくんでしょ? あ、そうだ。極限いっても漫才続けられるようにおかんに来てもらおうかしら」
「うむ、まかせたぞ」
「…こ、これ以上恥を広めないでくだされ!」
ZANの嘆きもむなしく、アリアンロッドはそそくさとシャルテを呼ぶ。
「あらあら。ホントにすごい色になってますわね」
開口一番、シャルテは無残なZANのボディーカラーを見て目を丸くする。
そう、いいように乗っ取られたZANのボディーカラーは絶対普通の人が使わないような、明るい紫をベースにした配色になっているのだ。
はっきり言ってドぎつい…。
「ぐ、これは拙者の」
「拙者いつもとかわらないでござるよ」
「だまれバカ犬!!」
「犬言うな」
一人漫才というのも憚られるようなすごいテンポでZANの口が動く。
シャルテはそれをほほ笑ましく見守る。
というか見守ってないで助けて…。
そうしてる間に洞窟2の花畑まで来てしまった。ここは一瞬の判断遅延で死を招く。
ZANはこのときばかりは身体の操作を優先として愛用のラヴィス未鑑定をーーーってシンセサイザーだしっ!!
武器を慌ててアイテムパックから取り換える。
「あ、こら、変えンじゃね!」
「やかましいっ!」
ZANはとっさにフリーズトラップも設置してリリーの群れに突貫する。奴らは近づけばすぐにはメギドを放たない。先にやらねば! 一撃、二撃とリリーに衝撃波をあびせかける。
三撃目! これで三匹は狩れるはず!
ブン(シンセサイザー)。
「・・・・・・をを?! 当たらないぞ、ござる?!」
「ござるじゃねーー!」
クケケケと笑うリリー。拙者はもう一度シンセサイザーを振り抜いてその横っ面をひっぱたく。
と、その背後のリリーがメギドを放とうとしているのが見て取れた! 回避はーーー間に合わん!
その瞬間、シャルテのギバータが炸裂、同時にトラップが効果を発揮し、辺り一面が凍りついた。
「かたじけないっ!」
ZANは瞬く間に凍りついたリリーを切って捨てた。
「…あ、危なかった」
「持ち替えンなよ、佐助」
「……ええいっ。こんなところで赤い画面など見たくないでござる!」
「ふむ、だが見てみると大分お前の性能というのが分かってきたな。やっぱり我らと比べると天地ほどの差があるぞ、その攻撃力」
「ハカセ! おぬしもそれが見たいだけならこんなことをせんでも……」
「なに、スペック確認はおまけだ」
天災は言い切った。
「本来の目的は…この姿でいろいろいたずらすることだからな。そぉれ女性モーション♪」
くるりと回ってポーズを決めるドぎつい紫のHucast。
「ぶわははは! 佐助サイコーー!w」
「て、てめぇらの血は何色でござるー!!」
「こ、こら佐助、オレを羽交い締めにするな! 操作ができねぇ」
「でえいっ! 拙者のイメージが壊れるでござるっ! さあせるかぁぁっ!」
「ふむ、ではキーボードは私が操作しよう」
「なっ ハカセ!!」
「ハハハハ、所詮アンドロイドの浅知恵だな。そうやってラフを羽交い締めにしていればお前も思うようにキーボードを打つことはできまいッ」
そんな葛藤をシャルテは微笑みを浮かべて眺めている。
「あらあら、たのしそうですねぇ。うふふ。あ、そうだ、ZANさんズ」
「「「……それは我らことか?」」」
「今日はメンテの日だからもう後少しでラグオルにいられなくなりますよ?」
そうだった。今日は定例メンテの日なので、午前11時には転送機のメンテの為、パイオニア2から降りられなくなるのである。
「た、助かった! ではもう今日はここら辺でお開きにーーー」
「ええい、まだデータが足りんのだ! メンテまで時間がない、シャルテ、いくぞ」
「はいはいー」
「誰か拙者の話を聞けぇえぇ!」
結局、ZANはメンテ開始までその姿でラグオルをさまよった。

「ワフ?! もう終わりか!」
「うむ、実験は成功だな…む? どうしたZAN?」
「もう拙者、お婿に行けないでござる…(涙」

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