今度は拙者が静止する日

その日、拙者がいつものように飛空庭のベランダで煎餅とお茶を傍らに、ネコのデルタを膝枕に抱いて『完四郎広目手控』(高橋克彦:著)を読んでいた。
すると庭の昇降機が上がってきた。中から出てきた鋼屋が座った目つきでずけりと言った。
「おい、90Mでスタンプが売れたぞ」

拙者は思わず本を取り落とし、それがデルタを直撃。
さっきまでのどを鳴らしていたネコに噛みつかれることになった。

いやぁ、まさか売れるとは;;

「えー、でなんだ。ここでちょっと予算会議を開こうと思うのでござるよ」
拙者がそう宣言すると卓袱台を囲んで鋼屋、アタウアルパが小さく頷いた。
その卓袱台の上にはギルドの運営する信用金庫、通称銀行の記入通帳がある。
鋼屋が店番ゴーレムから回収した金をすぐに預けてきたのだ。
その記載額は先ほど聞いた上でもなんとも信じられない金額になっている。
「三等分すると30Mか」
「え? ちょ、まってくだされ! 拙者これで念願のブーストが」
「ありゃ70M以上するだろうが!」
「捕ってきたのは拙者でござる!」
「売子したのは俺のゴーレムだ! 大体お前がマリオネット嫌いなんて変な事してやがるから話がややこしくなるんじゃねぇか!」

鋼屋がダンっと叩いた卓袱台がゆれ、それに伴い部屋中に所狭しと並べられているガラクタが一瞬浮かぶ。

「落ち着け、二人とも」
ヒートアップしてた拙者と鋼屋をアタウアルパがたしなめた。
「アタウ、お前はどーなんだ?」
「俺は構わん。欲しい物が有るわけでもない。好きに使えばいい」
「なんでぇ。欲のねぇ奴だな」
「…出番も、少ないからな」

あ、なんかアタウが煤けてしまった。

「え、あー。…鋼屋は何が欲しいのでござる?」
「ん? そうだな まず鞄と武器を新調したいぞ。メロディアスハンマー改とか旅行鞄とか。もう荷物が多くてな。それからもうすぐ二次職だからな、そちらの備えも欲しいぞ?」
「そんなものなら…ブースト購入の残金で何とかなると思うでござるよ」
「…すまん、ちょっといいか?」
「ん? なんだアタウ、やっぱおめぇも欲しい物あったか?」
「ああ…」
「な、なんでござる? た、高い物でござるか?」
「思ったんだが…今一番必要なのはタンスじゃないか?」
「……」
「……」

拙者達は互いの顔を見渡し、それからふと持ち物をチェックした。
普段使わない小物を抱え込んでいる。

「……必要だろ?」
「……必要だな」
「……必要でござる」

決定:箪笥購入。

スポンサーサイト

Comment

Comment Form
公開設定

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。