倒せ! 魔獣フェニックスっ!

その日、出番のない拙者が剣の聖刻年代記・蒼天の聖王3『双天の王者』を読んでいるとフラフラになったアタウアルパがかえってきた。
見慣れない黒い鎧姿の彼は無言のまま畳の上にあぐらをかくと、がっくりと肩を落としてため息をついた。
「どうしたのでござる、珍しい」
拙者がそう声をかけるといつもよりきつい目つきで拙者を横にらみにする。
だがその眼光には普段の力強さがなく、むしろ曇ガラスの様でもあった。
拙者の顔色を伺いつつ、アタウアルパが口を開く。
「…今日、この75職服を購入してきた」
「その服か…。はて、75っていうとどんなイベントだったっけ?」
「千姫だ」
そう言って、アタウアルパは事の次第を話し始めた。
千姫のクエストをクリアすると初めて入手可能になるLv75職服。
だがそのクエストを受ける為にはJOBを30以上にあげる必要がある。
その為彼はここ数日、拙者の出番も削って海賊の島でLvあげにいそしんでいた。
おかげで血判状も160枚たまったらしい。タイニークラウンも手に入るようだし、拙者としてもホクホクである。
で、なんとか昨日までにLv30まで達したため、今日、ユリウス殿と一緒にクエストを受けに向かったという。
クエストはなんでもいいから敵を1000匹倒せ、というものだったため、彼らは湧きのいい廃炭坑へと向かった。ベア殴りまくりツアーである。
そして勢いに任せて千匹撃破を達成し、千姫に報告に向かったのである。
「そこまでは、いい」
彼はため息をつく。
その後、もう一つのクエストとしてフェニックスとのタイマン勝負をさせられることになったアタウアルパは回復薬をしこたま用意してこれに挑んだ。
「が、出てきたのはコッケだった」
「は?」
「魔鳥フェニックスと書かれていたが、あれは間違いなくコッコーだった。」
「バジリコッケとか?」
「いや、ただのピンク色の、海岸にたくさんいるあれだ。それがこう、後ろにココッコーをつれていてな」
「…うわぁ、それ倒したのか?」
「…いや、あまりにあまりで倒せなかった。そうしたら…」
そうした所、声高に勝利宣言する千姫の後頭部を激しく叩くじじいが現れた。
「このバカチンがーーー!」
一喝するやじじいのショータイム。お説教モード突入。そのまま数時間。
「…数時間?」
「ああ、数時間だ」
「…それ、つきあったのか?」
「…帰るに帰れなくてな…。まだ鎧も入手してなかった」
「…で、ソレでござるか」
「で、これだ」
拙者たちは何ともいたたまれない気持ちでいっぱいになりつつ、言葉を発しあぐねた。
明日からはまた拙者の出番らしい。

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