今日の出来事

 あ、ありのまま今日起こったことを話すでござる!
『長いこと狙っていた課長の椅子を副部長に取られた』
な… 何を言ってるのか わからないと思うでござるが
拙者も何をされたのかわからなかった…
中央演算装置がどうにかなりそうだった…
ウィルスだとか超スピードだとかそんなチャチなものでは断じてござらん
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったでござる…

 4月、それは新生の時、四月、それは新たなるスタート!
 そこかしこで桜が咲き乱れ、若人は浮かれ、人は皆あらたな始まりに
胸をときめかせるそんな時期。拙者の勤めるD因子研究所東京三鷹支部(仮名)にも新たな風が吹いていた。

 ーーー辞令 下記の者、事務部副部長を任ずるーーー

それは拙者の直接の上司Uの課長職から副部長への昇進告知であった。
「フム、これで上司Uの苦労もすこしはへるというものでござるな」
拙者もそう思いつつ、辞令の張り出された掲示板の横を通り過ぎようとしてピタリと足を止めた。
「ーーーまてよ」
 拙者の中央演算装置が激しく活動を始める。普段職場では滅多に働かないそれはその時、実に通常の数倍の性能で稼働した。
 あれがこうなって、ああなって、フム。
 拙者はぽんと手を打つと、すたすたと職場である企画室の扉をくぐった。
 「上司U、いや副部長殿、おめでとうでござるよ」
 拙者がそう声をかけると拙者の席の対面、32インチの大型液晶モニターの向こうからのっそりと熊が顔を上げた。
 「ああ、ZANちゃん。おはよう…」
 拙者をちゃんづけで呼ぶこの熊こそ、だれあろう上司Uである。
 確か出身は樺太だったか。(注:この設定はねつ造です)
 上司Uが狭そうにからだを揺すって、また机の上をごそごそと漁る。
 別に本能から鮭を漁ろうとしてたのではなく、書類をまとめているようだ。
 「おはようでござる。察するに、やはり移動されるのでござるか?」
 「ああ、隣の部屋にね。ここはあくまで『企画室』だから」
 「なるほど、事務部長室でござるな。現在事務部長は不在。となれば上司Uがその席に座ると言うのも頷けるでござるよ。役職柄拙者に聞かせられぬ話題もあるでござろうから」
 「ああうん、まあそうなんだけどねぇ。別段ZANちゃんに聞かれてもねぇ」
 といって肩を揺らして笑う。どうやら苦笑したらしいが、牙が見えて結構いかつい。先日もお茶を入れに来た新人秘書が「食べられるかと思った」とのたもうてたほどでござる。(注:この設定はねつ造)
 「悪いんだけど、PCとか任せていいかな?」
 きた。
 「心得たでござるよ」
 拙者はつと壁の向こうにある事務部長室を見やる。企画室と違い完全に個人スペースとなってるそこには当然マカボニーの机とそれに見合う黒い合皮のチェアが据えられている。

 そこにでんと座る熊。シュールでござるな。(注:この設(ry)

 だがそうなって貰わなければ困る。拙者は高速演算を行う。
 「となると移動するのはPCだけでいいので? ああ、もちろん書類などは拙者も手をつけられないのでござるが、他にそう、たとえばーーー椅子とか」
 拙者の目が光ったのは32インチモニターの影になっていて上司Uからは見えていない。計算通り。
 「ああ、PCだけでいいよ。椅子は向こうの使うし。…あとプリンターだけお願い」
 どこぞの仮面のテロリスト風に言えば『条件はすべてクリアー』といったところか。
 拙者はすらりと刀を引き抜く。
 「承知ーーーところで副部長殿、拙者実は以前から課長の椅子を狙っておりましてな」
 きょとんとする熊。そしてすぐにそれが何を指しているかを察する。こういう頭の切れの良さが昇進の理由でござろうな。元来こうしたやりとりもお好きだし。
 「ああーー。椅子だけでいいの?」
 「さすがに机までは」
 「ん、いいんじゃない? 入れ替えといて」
 「合点承知」

 こうして拙者は課長の椅子 フレックス肘掛け付き(青)を手に入れた! 万歳。
 (なにせ拙者が使ってた椅子はガスショックがいかれて高さ調整がきかない代物だったのである)

 三日後
 「ザンちゃ~ん」
 「? どうしたでござる?」
 「やっぱ椅子返して」
 「なんと?!」
 「いや、どーも座り心地が悪くって…そっちがいい」
 「副部長が課長の椅子を?!」
 それなんてパワハラ?!なんて拙者が思う間もなくのしのしとやってきた熊がひょいひょいと椅子を入れ替える。くっ、拙者はあんなに入れ替えに苦労したというのに!
 「かわりにこの部長の椅子をあげるから」
 だあああ! 望んでないでござるうううう!

 部長の椅子は、座った感じコレジャナイ感で一杯でござった。とほほ。

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